夜の影で哂うもの

 私は死体になったまま、穴からぼんやりと宙を見上げていた。
 冷えた土の湿った感触が、奇妙なほどに剥き出しの腕に現実味を与えた。

 ざくり、という音が耳につく。
 投げられるように落とされた土が、力を失った両足を重くした。

 高架線の隙間から差し込む、気持ちが悪いくらいに明るい月の光。
 感情のない作業を続ける、悲しいくらいに見慣れた顔を、照らし出していた。

(お父さん)

 音にならないその言葉は、引っ掻くように胸を抉る。

 ああ、どうして――どうして、こんなことに。

 何が悪かったのだろう。もう今は、何もかもが、悪かったような気がする。
 くすくすという低い笑い声が、目眩のように響く。

(あれ、は?)

 シャベルから落ちてきた土が、私の視界を塞ぐ。
 もうその感触すら薄れているのに、その笑声は耳にこびりついて離れない。

 ぐるぐるとただ回り続ける、艶やかな悪意に満ちた嘲笑。

(あれは)

 意識せずに私は心の中に呟いた。

 あれは、蛇だと。